行政書士の教科書 > 民泊 > 民泊事業に資格って必要?求められている「民泊適正管理主任者」とは?

民泊事業に資格って必要?求められている「民泊適正管理主任者」とは?

この記事は約 11 分で読めます
[更新日]2018/05/14 481 -

一般の住宅を旅行者に有料で貸し出す「民泊」が注目されています。

なぜ注目されているかというと、利用する側にとっても、リーズナブルに宿泊でき、貸し出す側にとっても住宅の空き部屋や、マンションなどの空き室を有効活用できるからです。

民泊営業を始める人が増加するなか、民泊の運営・管理をする代行業者や、民泊を利用したい旅行客と住宅を貸したいオーナーをマッチングさせる仲介業者も続々と進出しています。

民営の運営・管理を請け負う代行業者を始めるためには、資格が必要になりますし、また「民泊」に携わる際に取得しておいた方がよい新しい資格も登場しています。

民泊ビジネスを始めるにあたって必要な資格と、民泊ビジネスの助けとなる新しい資格についてまとめました。

民泊新法によって始めやすくなった「民泊」

民泊営業や民泊事業に参入する企業が増えている理由の1つに「民泊新法」が公布されたことがあります。

民泊新法が公布される以前、「民泊」は都道府県知事の許可を取るのが難しい「旅館業法」が適用されていました。

そのため、ここ数年「ヤミ民泊」が急増し、近隣住民とのトラブルが発生したり、犯罪の温床になっていたりと全国で問題が発生していたのですが、これらの問題を解決するために、2017年10月27日に民泊に関する細かいルールを定めた「民泊新法」が公布されました。

民泊サービスの適正化を図りながら、外国人旅行者の急増による宿泊施設の不足や、少子高齢化による空き家問題の解決が期待されています。

外国人だけでなく、日本人の国内旅行での民泊利用も増えつつあり、民泊営業を始めるオーナーだけでなく、民泊の運営・管理をする代行業者や、民泊を利用したい旅行客と住宅を貸したいオーナーをマッチングさせる仲介業者も増えているのです。

民泊新法(住宅宿泊事業法)の対象者と資格

民泊新法(住宅宿泊事業法)の対象者となっているのは、「住宅宿泊事業主」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」です。

住宅宿泊事業者・・・民泊施設の所有者(オーナー)
住宅宿泊管理業者・・・民泊施設の運営や管理を代行する業者
住宅宿泊仲介業者・・・民泊施設を貸したい人と、民泊施設に泊まりたい人をマッチングさせる業者

住宅宿泊事業者については、これまでの記事でも説明してきましたが、民泊施設として「届け出」ができる住宅を所有していれば、都道府県知事に届け出をするだけで、営業を開始することができ、開業に必要な資格は特にありません。

住宅宿泊管理業者は、国土交通大臣の登録が義務付けられているため、国土交通大臣への申請が必要ですが、申請をするためには資格が必要になります。

住宅宿泊仲介業者は、観光庁長官の登録が義務づけられているため、観光庁長官への申請が必要です。

今回は、申請をするために資格が必要な「住宅宿泊管理業者」について説明していきたいと思います。

住宅宿泊管理業者とは?

民泊新法で定められている民泊施設には、オーナーの住んでいる住宅の一部を貸し出すタイプの家主居住型(ホームステイ型)と、オーナーが住んでいない住宅を貸し出すタイプの家主不在型(投資型)の2つがあります。

家主不在型(投資型)のタイプの民泊では、オーナーが宿泊者の管理やトラブルの対応などを適正に行うことが難しいため、住宅宿泊管理業者への管理委託が義務づけられています。

家主不在型(投資型)の民泊施設のオーナーから委託を受けて、民泊の運営・管理を行うのが「住宅宿泊管理業者」です。

住宅宿泊管理業者になるためには?

住宅宿泊管理者の登録ができる人は、以下のいずれかの要件を満たしている必要があり、個人か法人かによっても異なります。

住宅宿泊管理者の登録ができる個人

  • 住宅の取引、または管理に関する契約実務業務に2年以上従事した者
  • 宅地建物取引士の登録を受けている者
  • 管理業務主任者の登録を受けている者
  • 賃貸不動産経営管理士の登録を受けている者

住宅の取引、または管理に関する契約実務業務に2年以上従事した者

わかりやすく言うと、不動産関係の会社で2年以上実務経験を積んだ人です。

宅地建物取引士の登録を受けている者

宅地建物取引士は「宅建」とも呼ばれています。

不動産に関する法律知識をもった「不動産取引の専門家」といえる国家資格ですが、合格率は例年15%前後という取得が難しい資格です。

受験資格は特になく、年に1回試験があります。

宅地建物取引士の試験に合格したら、試験開催地の都道府県知事に対して登録手続きを行い、取引士証の交付を受けることで、宅地建物取引士になることができます。

管理業務主任者の登録を受けている者

「管理業務主任者」とは、マンション管理会社の従業員として、管理委託契約時に重要事項を説明したり、組合に対して管理状況の報告などを行う際に必要となる国家資格者です。

マンション管理会社は、スムーズに業務をこなせるようにするため、一定数の「管理業務主任者」を設置することが義務付けられていることからも、不動産業界には欠かせない資格であることがわかると思います。

受験資格は特になく、年に1回試験がありますが、合格率は20%前後と、決して簡単ではありません。

「管理業務主任者」の試験に合格したら、試験開催地の都道府県知事に対して登録手続きを行い、管理業務主任者証の交付を受けることで「管理業務主任者」になることができます。

賃貸不動産経営管理士の登録を受けている者

「賃貸不動産経営管理士」とは、高度な専門的知識と倫理観を持って業務にあたる賃貸不動産管理に関する専門家です。

平成28年の賃貸住宅管理業者登録制度の一部改正により、注目されている「民間資格」です。

年に1回行われる試験では、合格率が45%前後と高く、他の国家資格と比較すると取得しやすい資格ではありますが、注意が必要です。

受験資格はないものの、「賃貸不動産経営管理士」の試験に合格後、登録手続きを行う際に条件があるからです。

【登録手続きを行う際に必要な要件】

  • 宅地建物取引士の登録を受けている者
  • 住宅の取引、または管理に関する契約実務業務に2年以上従事した者

登録手続きを行う際に、既に資格や経験が必要になるため、合格者の平均年齢が40.5歳と少し高めになっています。

住宅宿泊管理業の登録ができる法人

  • 個人で登録するための要件を満たす者を従業者として有する法人
  • 宅地建物取引業者の免許を受けている法人
  • マンション管理業者の登録を受けている法人
  • 賃貸住宅管理業者の登録を受けている法人

法人の場合は、上記の資格を持っている人を雇えば問題ありません。

住宅宿泊管理業の届け出

住宅宿泊管理業者は、国土交通大臣の登録が義務付けられているため、国土交通大臣への申請が必要です。

登録は「民泊制度運営システム」からオンラインで行うことができます。

登録免許税(9万円)の支払いが必要で、5年ごとに更新しなくてはなりません。

【民泊制度運営システムとは?】
住宅宿泊事業者、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者の事業を営もうとする者が、届出や申請、報告などの手続きの一部を、オンライン上で行うことができるシステムです。

民泊制度運営システムを利用するためには、「電子証明書」が必要になります。

電子証明書を取得する方法

電子証明書とは、本人であることを電子的に証明するもので、書面取引における印鑑証明書に代わるものです。

個人の場合は、マイナンバーカードの電子認証システムを活用できます。その際には、ICカードリーダーか、マイナンバーカード対応NFCを搭載したスマートフォンが必要です。

電子証明書の取得の手順は次の通りです。

【手順1】専用ソフトウェアのダウンロード

電子証明書の発行申請をするために必要なファイルを作成するため、法務省ホームページから専用ソフト「商業登記電子認証ソフト」をダウンロードします(無料)。

【手順2】電子証明書の発行申請に必要なファイルの作成

「商業登記電子認証ソフト」を起動して、「鍵ペアファイル及び証明書発行申請ファイルの作成」をクリック後、必要事項を記入します。
ファイル作成結果を保存後、「電子証明書発行申請書」をプリントアウトし、手書きで必要事項を記入します。

【手順3】電子証明書の発行申請

手順2で作成した「電子証明書発行申請書」と、「SHINSEI」ファイルのみを保存したUSBメモリ、印鑑カードの3点を持参し、管轄の法務局か登記所に提出し手数料を支払います。

【登記所と法務局の違いとは?】
法務局と登記所に違いはありません。
法務局も登記所も、登記事務をつかさどる国の行政機関を指しており、同じと考えて問題はありません。
本来、登記事務は、法務局と法務局の支局・出張所が取り扱っています。
そのため「登記所」という役所はなく、登記事務を扱うことから法務局の呼称として使用されています。

電子証明書の発行にかかる手数料は、証明期間が3ヶ月の場合2,500円、6ヶ月で4,300円、9ヶ月で6,100円と、27ヶ月まで3ヶ月当たり1,800円を加算して計算されます。

窓口に上記を提出すると「電子証明書発行確認票」が交付されます。

また、電子証明書の発行申請は郵送でも行うことができます。

【郵送で申請する場合】
「商業登記電子認証ソフト」で作成した申請書と「SHINSEI」ファイルのみを保存したUSBメモリ、印鑑カードの3点と、切手を貼付した返信用封筒を送付します。
印鑑カードも同封しなくてはならないため、普通郵便ではなく補償が付く「書留」などで送付(返信用も同様)するのがおすすめです。

【手順4】電子証明書の取得

登記所(または法務局)から帰ってきたら、手順1でダウンロードした「商業登記電子認証ソフト」を立ち上げ、「電子証明書取得」をクリックし、電子証明書をダウンロードします。

手順2で作成した「鍵ペアファイル」と、登記所(または法務局)から発行された「電子証明書発行確認票」が必要です。

住宅宿泊管理業の業務

住宅宿泊管理業の義務として、誇大な広告・不当な勧誘の禁止、管理業務の再委託禁止といった決まりがあるほか、管理業務として義務づけられているものには、次のようなものがあります。

設備の維持・管理・運営に関する業務

  • 適正な登録を受けている民泊施設であることを証明する標識の設置
  • 鍵の管理・受け渡し
  • 定期的な清掃・寝具、タオル類の洗濯
  • 本人確認、宿泊名簿の作成・管理
  • 帳簿の備え付け・保存

宿泊者に関する業務

  • 宿泊者の安全管理(非常用照明の設置、避難経路の表示、非常時の通報・連絡先の表示)
  • 外国人観光旅客の利便性の確保
  • 守るべきルールやマナーの周知・徹底

特に注意が必要なのが、外国人宿泊者への対応です。

外国語で必要事項の明示をするなど、外国人宿泊者の快適性や利便性を確保する必要があります。

設備の使用方法、最寄り駅や利便施設への経路など利用できる交通手段、消防署・警察署・医療機関・住宅宿泊管理業者への連絡方法などが記載された外国語の書面を居室に備え付けたり、タブレット端末への表示させるなど、情報を提供する義務があります。

宿泊者が外国人である場合、文化や習慣の違いから、騒音問題、ゴミ出し問題などで周辺住民とトラブルに発展することも多いです。

トラブル防止のために、宿泊者が守るべきルールやマナーを決め、周知徹底を図ることも大切です。

近隣地域に関する業務

住宅宿泊管理業にとって、近隣住民とのトラブルや苦情への対応も大事な業務です。

近隣住民とのトラブルや苦情にしっかり対応しておかないと、最悪「民泊営業」が続けられなくなってしまうからです。

民泊新法では、周辺地域の住民からの苦情や問い合わせについては、深夜早朝を問わず常時対応する必要がある、管理業者に苦情の連絡が来て、現地(民泊施設)に赴く場合も30分以内を目安とする、とされています。

すぐに回答ができずに保留する場合は、回答期日を明示するなどの配慮が必要です。

オーナーへの定期報告

民泊管理業務の実施状況、住宅の維持・保全の状況、近隣住民からの苦情やトラブルの発生状況などを、定期的にオーナーへ報告する義務があります。

新しい資格「民泊適正管理主任者」とは?

「民泊」に関係する新しい資格も登場しています。それが「民泊適正管理主任者」です。

民泊は、外国人旅行者の急増による宿泊施設不足や、少子高齢化による住宅の空き室問題を解決できるとして期待されているビジネスですが、その反面、多くの問題も抱えています。

【民泊の抱える問題とは?】

  • 建築法違反や消防法違反
  • 人から借りている不動産を無断で他人に貸し出す「転貸」問題
  • 見ず知らずの不特定多数の外国人観光客が住宅街を出入りすることによる防犯上の問題
  • 宿泊客のマナー問題
  • 近隣住民とのトラブルや苦情

これらの問題の要因を予見し未然に防いだり、起きた問題に対し、専門知識を持って対応できる専門資格が「民泊適正管理主任者」です。

民泊事業に関わる者の相談に応じることができる「民泊適正管理主任者」は、適正な民泊事業の運営には欠かせない存在といえるでしょう。

「民泊適正管理主任者」の資格を取得するメリット

民泊に関する契約締結や、民泊に関する問題やトラブルなどに対して、専門知識を持って民泊に携わる者の相談に応じることができる専門資格「民泊適正管理主任者」。

この資格を取得するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

【民泊適正管理主任者」を取得するメリット】

  • 民泊事業にかかわる基礎知識が習得できる
  • 適正な方法で、民泊ビジネスを行うことができる
  • 民泊事業運営における疑問への対応、トラブルの回避に役立つ知識が習得できる
  • 資格を取得後「ADR調停人研修」を受講することで「ADR調停人」の資格を取得できる

ADR調停人って何?

さまざまな民事上のトラブルを解決するのは、なにも裁判だけではありません。

裁判にするまでもない民事上のトラブルを、話し合い(調停・あっせん)で解決する方法が、「裁判外紛争解決手続」通称「ADR」です。

裁判外紛争解決手続(ADR)は、裁判所だけではなく、行政機関や民間事業者が行っているケースもあります。

「ADR調停人」は、民間事業者が行う裁判外紛争解決手続(ADR)で、当事者との間に入り、専門家としての知識を活かして柔軟な解決を図ることで、報酬を得ることができる資格です。

民泊適正管理主任者は、ADR調停人の基礎資格であり、法務大臣から認証されている資格なのです。

【民泊適正管理主任者がADR調停人となるメリット】

  • 民泊事業において、トラブルを解決できる能力があるため、不動産オーナーから民泊事業者として選ばれやすくなる
  • 民泊事業者のトラブルを解決することで報酬を受け取ることができる
  • トラブル解決能力があるため、民泊事業者として信頼される

「民泊適正管理主任者」の資格を取得するためには?

「民泊適正管理主任者」の資格を取得するために必要な受験資格は特にありません。

【民泊適正管理主任者の資格取得にオススメの人】

  • 既に民泊事業に関わっている人(企業)
  • これから民泊事業へ参入しようと考えている人(企業)
  • 不動産オーナーに対し物件の民泊活用を提案したい・補助サービスを提供したい企業
  • 民泊を利用する際にトラブルを回避したいと考えている人

「民泊適正管理主任者」資格取得の流れ

申し込み

LEC(東京リーガルマインド)の受験申込ページより申込みをします。

認定講習受講

民泊適正管理主任者として必要な知識について計5時間の講習を受講し、レポートを提出します。

合格判定

提出したレポートを一般社団法人日本民泊適正推進機構が評価し、一定水準以上の成績を収めた方を合格者とします。
合否の結果は1ヶ月程度で郵送されます。

登録

民泊適正管理主任者の合格者は、一般社団法人日本民泊適正推進機構に登録します。登録手数料として、10,800円がかかります。

登録後、民泊適正管理主任者の認定証が発行されます。

登録の更新

登録の有効期間は2年間で、2年毎に更新が必要です。