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注目の新ビジネス「民泊」。民泊の問題を解決する「民泊新法」の特徴とは?

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[更新日]2018/04/13 556 -

「民泊」というと、都会に住む人や、高校の修学旅行などに人気の、農業・漁業・林業などの田舎体験ができる宿泊施設のことを思い浮かべる人も多いかもしれませんが、今回テーマにする「民泊」は、それとは異なります。

注目の新ビジネス「民泊」と、民泊の様々な問題を解決するべく制定された「民泊新法」について説明します。

注目の新ビジネス「民泊」とは?

ホテルや旅館などの宿泊施設ではなく、個人宅の空き部屋や、投資用のマンションなどを、インターネットを介して旅行者に有料で貸し出す宿泊サービスです。

外国人観光客の増加による宿泊施設の不足や、旅行客の宿泊ニーズの多様化、少子高齢化による空き家増加といった問題から生まれた新しい宿泊ビジネスで、主に外国人観光客を対象としています。

【外国人観光客に民泊が選ばれる理由】

  • ホテルや旅館よりも安く泊まれる
  • 変わった場所に泊まれる
  • 民泊施設にはキッチンが付いているので自炊ができる
  • ホームステイ感覚でその土地の暮らしを体験できる
  • 住宅宿泊事業者(部屋の持ち主)との交流を楽しめる

人を宿泊させて料金をいただく「宿泊サービス」を提供する場合は、旅館業としての許可が必要です。

以前は「民泊」にも「旅館業法」が適用されていましたが、様々な問題があり、2018年6月15日に「民泊」に関する法律が施行されました。

それが、民泊新法です。

民泊新法が制定されたのはなぜ?

それまでは、民泊の営業を行いたい場合、「旅館業」として許可を取得するか、「特区民泊」を活用する方法しかありませんでした。

【旅館業とは?】
旅館業には「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」の4種類があります。

民泊の営業を始めるには「簡易宿所」の許可を取得するのが一般的でしたが、法令で定められた立地や構造設備基準などを満たす必要があり、許可を取得するのは困難な状況にありました。

【特区民泊とは?】
外国人観光客のために「国家戦略特区」と指定されている自治体があります。

「国家戦略特区」は、旅館業法の適用が除外されるため、民泊の営業がしやすいのです。ただ、国家戦略特区と指定された自治体で、かつ「民泊条例」を制定している地域に限られます。

該当する地域は、東京都大田区、北九州市、大阪府の一部、大阪市、新潟市の5つだけです。

旅館業として許可を取得する方法も、特区民泊を活用する方法も、許可を取るための条件のハードルが高く、空き家や空き室を活用して民泊を行いたくても難しい状況にありました。

トラブルが多かった民泊

民泊ビジネスを行うために、営業旅館業として許可を取得する方法も、特区民泊を活用する方法も難しかったことから、許可を取らずに営業する違法民泊(ヤミ民泊)が急増しました。

民泊の多くが外国人観光客ということもあり、民泊施設の近隣では、文化の違いによる習慣、騒音やゴミ出し問題、部屋を間違えて侵入するなどの被害に遭う人も多く、全国でトラブルが多発するようになりました。

こういった違法民泊(ヤミ民泊)や、民泊によるトラブルを防止するために、2018年6月15日に民泊事業を実施する場合のルールを定めた民泊新法(正式名称は住宅宿泊事業法)が施行されたのです。

民泊新法とはどんな法律?

民泊新法は、正式には「住宅宿泊事業法」といいます。

民泊サービスの適正化を図りながら、観光客の来訪・滞在促進を目指すことを目的とした法律です。

これまで「国家戦略特区」でのみ認めてきた「民泊」を全国に解禁したことで、自治体への届け出をすれば宿泊施設を作ることができなかった住宅街でも「民泊」の営業が可能となりました。

届け出によって、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」を把握できる仕組みになっています。

住宅宿泊事業者・・・民泊施設の所有者
住宅宿泊管理業者・・・民泊施設の運営や管理を代行する業者
住宅宿泊仲介業者・・・民泊施設を貸したい人と、民泊施設に泊まりたい人をマッチングさせる業者

トラブル防止のための細かいルールを定めたことで「民泊」という新しい宿泊サービスも徐々に受け入られつつあります。

民泊施設として届け出ができる住宅

自宅や、投資用のマンションなどを「民泊施設」として有効活用したいと考えている人もいると思いますが、どんな住宅でも良いというわけではありません。

民泊新法(住宅宿泊事業法)では、民泊施設として「届け出」ができる住宅についても定められています。

  • 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
  • 入居者の募集が行われている家屋
  • 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

現に人の生活の本拠として使用されている家屋とは?

生活が継続して営まれている家屋のことです。

つまり、民泊の営業者が自宅として利用している家屋、住民票上の住所となっている家屋をいいます。

入居者の募集が行われている家屋とは?

民泊を行っている間も継続して、賃貸・分譲・売却の募集が行われている物件のことです。

故意に不利な条件を記載し応募者が来ないようにするなど、書類のうえでの募集であることが明らかである場合は、「入居者の募集が行われている家屋」としては認められません。

随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋とは?

年数回利用する別荘、休日に生活しているセカンドハウス(別宅)、転勤により一時的に生活の本拠を移しているもの、将来的な居住のために所有している空き家などが該当します。

使用した形跡がなく民泊の営業のために購入したと思われる投資用マンションは「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」として認められません。

マンションの場合は要注意!

マンションの管理規約で民泊営業が禁止されているケースがあります。

民泊新法(住宅宿泊事業法)の3つの特徴

  • 営業日数の上限が設定されている
  • 許可ではなく届け出を行うだけで営業することができる
  • 宿泊施設は「住宅」という位置づけ

営業日数の上限が設定されている

人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないこと、つまり、人気があっていくら予約が入ったとしても、1年間で最大180日しか営業できないということです。

1年で180日以上営業する場合は「民泊施設」とは認められず、「旅館業法違反」となります。

「宿泊日数」は、事業者ごとではなく、届出住宅ごとに算定します。

自治体によっては営業日数がさらに短くなることも・・・

民泊新法(住宅宿泊事業法)は、自治体が条例などで規制をかけることも可能です。

そのため、「民泊」に反対する自治体では、180日という営業日数の上限をさらに短縮する条例を制定することもでき、民泊事業がさらに厳しくなる場合もあります。

許可ではなく届け出を行うだけで営業することができる

都道府県知事の許可を受けなければ営業できないホテルや旅館とは違い、民泊を営業したい場合は、インターネットの民泊制度運営システムから届け出を行うだけで営業を開始することができます。

届け出の際、必要な書類は自治体ごとに異なりますが、登記事項証明書、区分所有建物である場合は規約の写し、居住要件を満たしていることを証明するための住宅の図面(法律に規定されている必要事項が記載されていれば手書きでも可)、入居者を募集していることを証明できる書類などの添付が必要です。

宿泊施設は「住宅」という位置づけ

民泊を行うことができる施設は「住宅」という位置づけになります。
先ほど「民泊施設として届け出ができる住宅」について説明しましたが、施設についても規定があります。

台所・浴室・トイレ・洗面設備が備えられた施設であること

  • 浴室・トイレ・洗面設備は、一緒になっている3点ユニットバスでも可
  • 浴槽がない場合、シャワーがあればOK
  • トイレは和式・洋式どちらでも構わない
  • 浴室のない「離れ」の場合、「母屋」に浴室があればOK

宿泊者1人あたりの床面積が「3.3 ㎡以上」必要

住宅の広さの条件は特にありませんが、居室の広さは、宿泊者一人当たりの床面積を「3.3 ㎡以上」確保する必要があります(台所、浴室、トイレ、洗面所、廊下、押入れ、床の間を含まない)。

これは「感染症などの衛生上のリスク」を減少するために必要とされている広さです。

民泊新法(住宅宿泊事業法)で定められている民泊サービスの種類

民泊新法で定められている民泊サービスには、家主居住型(ホームステイ型)と、家主不在型(投資型)の2つがあります。

家主居住型(ホームステイ型)とは?

家主の生活の本拠である(住民票がある)住宅の空き室などを貸し出す民泊のタイプを、家主居住型(ホームステイ型)と呼びます。

ホームステイ型民泊の営業を開始する場合、インターネット上から届け出をするだけで、住宅地でも民泊の営業が可能となります。

同じ敷地内にお客様を宿泊させることになるため、住宅宿泊管理業者(民泊を管理・運営する代行業者)に委託しなくてもすむ一方、チェックイン時の本人確認、名簿管理、衛生・安全確保、周辺住民からの苦情への対応などの全てを行わなければならず、適正な運営・管理が求められます。

ただ、住宅宿泊事業者(民泊の届け出をした本人)が仕事などで長時間、家を空けなくてはならない場合は、家族や従業員が在宅していても、住宅宿泊管理業者への委託が必要になります。

家主不在型(投資型)とは?

家主が生活の本拠としない(住んでいない)民泊施設を貸し出す民泊のタイプです。

ホームステイ型民泊と同様、インターネット上から届け出をすることで民泊の営業が可能となりますが、家主居住型(ホームステイ型)に比べると、家主不在型(投資型)は、周辺住民とトラブルが発生する頻度が高くなるので注意が必要です。

突然、見知らぬ外国人観光客が住宅地を出入りするようになることで不快感を表す住人もいますし、文化の違いによる習慣や、騒音、ゴミ出しに関することでトラブルが多いといいます。

そのため、自治体への届け出の他に、国土交通大臣の登録を受けた「住宅宿泊管理業者」に運営・管理を委託しなくてはならない決まりになっています。

民泊新法(住宅宿泊事業法)における「住宅宿泊事業者」の義務

住宅宿泊事業者とは、届け出をして民泊事業を行う人=民泊施設の所有者のことです。

自治体への届け出は、民泊制度運営システムを利用すれば、窓口に出向くことなくオンラインで届け出が可能です。

届け出の際、必要な書類は自治体ごとに異なりますが、登記事項証明書、区分所有建物である場合は規約の写し、居住要件を満たしていることを証明するための住宅の図面(法律に規定されている必要事項が記載されていれば手書きでも可)、入居者を募集していることを証明できる書類などの添付が必要です。

届け出を行う前にできれば周辺住民へ説明し、理解を得ることが望ましいとされています。

また民泊の予約手続きは、インターネット仲介業者を介して行われることが多いため「住宅宿泊仲介事業者」との契約が必要になることもあります。

住宅宿泊事業者には、届け出以外にも次のような義務があります。

宿泊者の衛生・安全の確保

「感染症等衛生上のリスク」を減少するため、居室の広さ(台所、浴室、トイレ、洗面所、廊下、押入れ、床の間を含まない)は、宿泊者一人当たりの床面積が「3.3 ㎡以上」確保する必要があります。

寝具や備品は宿泊者が入れ替わるごとに取り替えて常に清潔な状態を保ち、ダニやカビが発生しないよう除湿を心がけるなど、定期的に清掃、換気を行います。

非常用照明器具の設置、避難経路の表示など、宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置を講じる義務があります。

外国人宿泊者への外国語による案内

外国人宿泊者に対しては、外国語で必要事項の明示をするなど、外国人宿泊者の快適性や利便性を確保する必要があります。

設備の使用方法、最寄り駅や利便施設への経路など利用できる交通手段、消防署・警察署・医療機関・住宅宿泊管理業者への連絡方法などが記載された外国語の書面を居室に備え付けたり、タブレット端末への表示させるなど、情報を提供する義務があります。

宿泊者名簿の備付け・提出

宿泊者名簿は、代表者のみの記載は認められておらず「宿泊者全員」の記載が必須です。

その上で、宿泊グループが分かるように記載すること、宿泊者が外国人である場合は、国籍および旅券番号を保存すること、宿泊名簿は3年間保存することが定められています。

宿泊者名簿は、自治体からの要求があった場合、提出しなくてはなりません。

周辺住民からの苦情への対応

宿泊者が外国人である場合、文化や習慣の違いから、周辺住民とトラブルに発展することもあります。

宿泊者に守るべきルールを周知徹底させる責任があります。

民泊新法では、周辺地域の住民からの苦情や問い合わせについては「深夜早朝を問わず、常時、対応する必要がある」とあります。
すぐに回答ができずに保留する場合は、回答期日を明示するなどの配慮が必要です。

標識の掲示

届出住宅ごとに、届け出済みの民泊施設であることを示す標識を掲示する義務を負います。

門扉や玄関など、地上1.2メートル~1.8メートル程度の認識しやすい位置に掲示します。

民泊新法(住宅宿泊事業法)における「住宅宿泊管理業者」の義務

住宅宿泊管理業者とは、住宅宿泊事業者(民泊施設の所有者)の委託を受けて、民泊の運営・管理を代行する管理会社のことです。

住宅宿泊管理業者は、国土交通大臣の登録が義務付けられているため、国土交通大臣への申請が必要です。

民泊制度運営システムから行うことができますが、登録免許税(9万円)の支払いが必要で、5年ごとに更新しなくてはなりません。

また住宅宿泊管理業者には次のような義務があります。

誇大な広告・不当な勧誘の禁止

住宅宿泊管理業務の委託を受けることを目的とした広告や勧誘について、住宅宿泊事業者に誤認させるような誇大な広告や虚偽広告、委託者への強引な勧誘は禁止されています。

管理業務の再委託禁止

家主不在型(投資型)の住宅宿泊事業者から管理業務を委託された場合、「宿泊者の衛生・安全の確保」「外国人宿泊者への外国語による案内」「宿泊者名簿の備付け・提出」「周辺住民からの苦情への対応」といった住宅宿泊管理業務を行うこととなります。

住宅宿泊事業者から委託された住宅宿泊管理業務を、仕事だけ取って、業務は下請け業者に全て委託することは禁止されています。

ただ、住宅宿泊管理業務の一部については認められるケースもあります。

住宅宿泊事業者への定期報告

管理業務の実施状況、住宅の維持保全状況、周辺地域住民からの苦情の発生状況についての報告書を作成し、住宅宿泊事業者に定期的に報告する必要があります。

民泊新法(住宅宿泊事業法)における「住宅宿泊仲介業者」とは?

住宅宿泊仲介業者とは、民泊施設を貸したい人と、民泊施設に泊まりたい人をマッチングさせる仲介業者です。

住宅宿泊仲介業者になるためには、観光庁長官の登録が義務づけられているため、観光庁長官への申請が必要です。

住宅宿泊管理業者の登録と同様、登録免許税(9万円)の支払いが必要で、5年ごとに更新しなくてはなりません。

有名な住宅宿泊仲介業者というと、Airbnb(エアビーアンドビー)でしょう。
世界192カ国の33,000の都市で80万以上の宿を提供しており、民泊施設も数多く紹介されています。

住宅宿泊仲介業者には、取引条件の説明義務、名義貸しの禁止、行政庁による立ち入り検査など、義務や罰則が設けられていますので安全に取引することができます。

新しいビジネス「民泊」の問題点

外国人観光客急増による宿泊施設の不足、少子高齢化による空き家・空き室問題の解決策として注目されている民泊ですが、民泊の営業で注意しなければならないのが、営業日数の上限が設定されていることです。

民泊新法(住宅宿泊事業法)では、営業日数の上限は、1年間で180日以内と定められており、住宅宿泊管理業者や住宅宿泊仲介業者が日数制限の監視を担っています。

民泊新法(住宅宿泊事業法)は、自治体が条例などで規制をかけることも可能なため、180日という営業日数の上限をさらに短縮する条例を制定することができます。

そのため、住民の反発や治安を考え「民泊サービス」に消極的な自治体では、営業日数が短く設定されている地域もあります。

なぜ営業日数の上限が180日なの?

民泊新法(住宅宿泊事業法)によると、民泊を行うことができる施設は「住宅」という位置づけになっています。

1年(365日)の半分以上を、他人に有料で貸す宿泊サービスに活用している家は「住宅」とはいえないという考えから、営業日数の上限が180日となっているのです。

民泊が注目され、外国人観光客の民泊利用が増えているとはいえ、1年間で180日しか営業できないということは、180日で利益を出さなければならないということになります。

民泊で利益を上げるためには、経営センスや経営努力が必要であることは確かで、ビジネスとして参入しづらいといった面もあります。