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民泊を始める時にクリアしなければならない「建築基準法」と「消防法」とは?

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[掲載日]2018/04/17 476 -

「民泊」とは、個人宅の空き部屋や、所有しているマンションの空き室などを、インターネットを介して旅行者に有料で貸し出す宿泊サービスのことです。

民泊について定めた民泊新法(正式名称は住宅宿泊事業法)が公布されたことで、「民泊ビジネス」への期待がさらに高まっています。

民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行されるのは、平成30年6月15日からです。

民泊の営業は、空き家、空き室を抱えている不動産オーナーからすると、とても魅力的なビジネスに映ると思います。

しかし、民泊を始める時には「民泊新法」以外にも、自治体の民泊条例、建築基準法、消防法などクリアしなければならない規定が多く存在します。

今回は、民泊施設に関わる「建築基準法」と「消防法」、そして民泊を始める際に心強い味方となってくれる法のプロ「行政書士」の役割についてまとめました。

民泊施設と建築基準法


民泊を始めようと情報収集している中で「建物の用途変更が必要」といった話を聞いたことはありませんか?

建物の用途変更とはどういうことなのでしょうか。

建物の用途変更について説明するためには、まず建築基準法の話をする必要があります。

【建築基準法とは?】
建築物の敷地、構造、設備、用途に関する最低限の基準を定めた法律のことです。

建築基準法では、建物を建築する際に「住宅用」なのか「商業用」なのか、どのような目的の建築物なのかを申請しなくてはいけない決まりになっています。

そして、建物の用途とは、建物の使い道、どのような目的の建築物なのかといったことを指します。

建築基準法で「建物の用途」を決めている理由

建築基準法で、「建築物の用途」を決めている理由は、都市の健全な発展などを目的とする法律「都市計画法」にあります。

都市計画法では、どの地域にどの用途の建物を建てられるかを定めている「用途地域」があり、建てられる建物の用途に一定の制限を設けています。

なぜなら、住宅、商業施設、工場といった目的が違う様々な建物を、無秩序に建築してしまうと、生活環境が悪化したり、利便性が低下したり、仕事が非効率化してしまう可能性が高くなるからです。

都市の健全な発展、快適な環境を守り、秩序ある整備を図るために「建物の用途」や「用途地域」が決められているのです。

建物の用途区分

建物を建築する際に申請が必要な「建築物の用途」は、次のように分けられています。

  • 事務所など・・・事務所、警察署、消防署、郵便局、銀行など
  • ホテルなど・・・ホテル、旅館など
  • 病院など・・・病院、老人ホーム、身体障害者福祉ホーム、診療所、助産所、児童福祉施設など
  • 物品販売業を営む店舗など・・・百貨店、マーケット、美容院、クリーニング店など
  • 学校など・・・幼稚園、小中学校、高校、大学、専門学校、自動車教習所など
  • 飲食店など・・・飲食店、食堂、喫茶店、カフェ、バーなど
  • 集会所など・・・図書館、博物館、体育館、劇場、浴場施設、映画館、カラオケボックスなど
  • 工場等など・・・工場、畜舎、自転車駐車場、倉庫、観覧場、卸売市場、火葬場など
  • 住宅など・・・一戸建住宅、長屋、共同住宅、寮、寄宿舎、リゾートマンション、別荘など

建物の用途変更とは?

民泊新法(住宅宿泊事業法)が公布される以前、「民泊」がまだ「旅行業法」の適用を受けていたときには必要な手続きでした。

「旅行業法」が適用されていたとき、民泊を営業するためには都道府県知事に「簡易宿所」の営業許可をもらう必要がありました。

「簡易宿所」は、建築基準法でいう建物の用途は「ホテル」となります。

そして、民泊営業を行う民泊施設となる一戸建てやマンションの一室は、建築基準法でいう建物の用途は「住宅」となります。

そのため、民泊営業を開始するには、今まで用途が「住宅」だったものを「ホテル」に変更する必要があったのです。

これが「建物の用途変更」です。

これから民泊営業を始めたい場合は用途変更は必要?


先ほどお話ししたとおり、「民泊」は民泊新法(住宅宿泊事業法)が制定される以前は「旅行業法」の適用を受けていました。

そのため、民泊営業を始める場合には、都道府県知事に「簡易宿所」の営業許可をもらう必要があり、その申請のために「用途変更」が必要でした。

しかし、民泊のルールを定めた民泊新法(住宅宿泊事業法)が制定されたことで、民泊営業を始める時に、都道府県知事に「簡易宿所」の営業許可をもらう必要がなくなり、民泊営業の届け出を行うだけで営業ができるようになりました。

民泊施設として使用する一戸建てやマンションは、建築基準法でいう建物の用途区分は「住宅」となります。

民泊新法(住宅宿泊事業法)では、民泊を行うことができる施設は「住宅」という位置づけになっていますから、用途変更の必要はなく、都道府県知事に「届け出」をするだけで民泊営業を開始することができるのです。

ただ、民泊新法や建築基準法の規定をクリアしても、自治体の条例で住居専用地域での営業を禁止している場合もあるため、必ず確認が必要です。

建築基準の確認申請が必要なことも・・・

建物の用途変更は不要でも、例えば増築やリノベーション工事を行う場合には、違法建築物ではないか調べるとともに、建築基準の確認申請が必要になるケースもあります。

【建築基準の確認申請が必要なケース】

  • 防火地域または準防火地域内の場合は、増築の規模に関係なく確認申請が必要
  • 防火地域または準防火地域外であっても、工事面積の合計が10平方メートルを超える場合は確認申請が必要

建築基準の確認申請も、各自治体の民泊条例によって独自の規定があるため、各自治体が制定している「民泊条例」のチェックは必須です。

しかし、確認申請が必要であるかどうかの判断は素人には難しく、建築基準の確認申請の手続きも必要書類が多く、専門的な知識が必要となります。

そのため、建築士や行政書士など専門家に依頼した方が安心です。

民泊の届け出ができる「住宅」とは?


建築基準法の建物の用途区分が「住宅」でありさえすれば、どんな住宅でも民泊営業が開始できるというわけではありません。

民泊営業が認められない「住宅」もあるので注意が必要です。

民泊新法(住宅宿泊事業法)では、民泊施設として「届け出」ができる住宅と、義務づけられている設備についても決められています。

マンションの場合は、マンションの管理規約で民泊営業そのものが禁止されているケースがあるため、マンションの管理規約の確認が必要です。

民泊の届け出ができる「住宅」

【届け出ができる住宅】

  • 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
  • 入居者の募集が行われている家屋
  • 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

現に人の生活の本拠として使用されている家屋とは?

生活が継続して営まれている家屋のことです。

つまり、民泊の営業者が自宅として利用している家屋、住民票上の住所となっている家屋をいいます。

入居者の募集が行われている家屋とは?

民泊を行っている間も継続して、賃貸・分譲・売却の募集が行われている物件のことです。

故意に不利な条件を記載し応募者が来ないようにするなど、書類のうえでの募集であることが明らかである場合は、「入居者の募集が行われている家屋」としては認められません。

随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋とは?

年数回利用する別荘、休日に生活しているセカンドハウス(別宅)、転勤により一時的に生活の本拠を移しているもの、将来的な居住のために所有している空き家などが該当します。

使用した形跡がなく民泊の営業のために購入したと思われる投資用マンションは「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」として認められません。

民泊の届け出住宅に義務づけられている設備

【施設・設備の規定】

  • 台所・浴室・トイレ・洗面設備が備えられた施設であること
  • 浴室・トイレ・洗面設備は、一緒になっている3点ユニットバスでも可
  • 浴槽がない場合、シャワーがあればOK
  • トイレは和式・洋式どちらでも構わない
  • 浴室のない「離れ」の場合、「母屋」に浴室があればOK
  • 宿泊者1人あたりの床面積が「3.3 ㎡以上」必要

住宅の広さの条件は特にありませんが、居室の広さは、宿泊者一人当たりの床面積を「3.3 ㎡以上」確保する必要があります(台所、浴室、トイレ、洗面所、廊下、押入れ、床の間を含まない)。

これは「感染症などの衛生上のリスク」を減少するために必要とされている広さです。

民泊施設と消防法

民泊施設は、「民泊新法」「各自治体の条例」「建築基準法」以外に「消防法」にも適合させる必要があります。

一般の住宅を貸し出す「民泊」ですが、ただの「住宅」ではなく「届け出住宅」として明確に区別されており、「届け出住宅」は、不特定多数の人が出入りする施設とみなされるため、消防設備が必要となります。

各自治体の「火災予防条例」にもとづき、「防火対象物使用開始届出書」の提出が必要になる場合があるため、建物の所在地を管轄する消防署に確認をとりましょう。

一般住宅の一部を民泊施設とする場合に必要な「消防設備」

全ての民泊施設に設置義務があるのは、防炎物品(じゅうたん、カーテンなど)、携行用電灯、避難経路図となり、消防設備の設置は宿泊者の就寝する居室の面積部分によって異なります。

民泊部分が小さい場合

民泊として活用する部分が小さい場合は、建物全体が「一般住宅」とみなされ、新しい消防設備の設置は不要になります。

【消防設備の設置が不要なケース】

  • 家主居住型(ホームステイ型)の民泊スタイル
  • 宿泊者の就寝する居室の面積部分が50平方メートル以下

民泊部分が大きい場合・家主不在型(投資型)の場合

民泊として活用する部分が大きい場合は、建物全体が「用途が混在する防火対象物」として扱われます。

防火対象物とは、不特定多数の人に利用される建造物のことです。

【消防設備の設置が必要なケース】

  • 家主不在型(投資型)の民泊施設である場合
  • 宿泊者の就寝する居室の面積部分が50平方メートルを超える場合

この場合に必要となる消防用設備は、「消火器」「自動火災報知設備」「誘導灯」が想定されます。

消化器

民泊部分の床面積が150平方メートル以上の場合に必要です。

自動火災報知設備

  • 建物全体の延べ面積が、150平方メートル未満の場合は不要
  • 建物全体の延べ面積が、300平方メートル未満の場合は、民泊部分のみに設置すればよい
  • 建物全体の延べ面積が、300平方メートル以上の場合は、建物全体に自動火災報知設備の設置が必要

誘導灯

緩和規定の適用はあるが、ほぼ全ての民泊施設に設置が必要です。

民泊の届け出には消防署が発行する書類が必要です

民泊を営業したい場合は、都道府県知事に民泊営業の届け出をしなくてはなりません。

届け出は、インターネットの「民泊制度運営システム」からオンラインでもできますが、添付書類として「消防法令適合通知書」が必要になります。

消防法令適合通知書交付申請書とは?

民泊の営業を届け出る際に必要な添付書類「消防法令適合通知書」とは、設備だけではなく、避難経路なども含め「消防法」の基準に適合していることを示す証明書のことで、各消防署の予防課が発行してくれます。

この「消防法令適合通知書」を発行してもらうために「消防法令適合通知書交付申請書」という申請書類を、管轄の消防署予防指導課に提出する必要があります。

【消防法令適合通知書交付申請書の記入事項】

  • 名称(届出住宅の名称)
  • 所在地(届出住宅の所在地)
  • 届出住宅が存する防火対象物の延べ面積(㎡)
  • 届出住宅部分の床面積(㎡)
  • 宿泊室(宿泊者の就寝の用に供する室)の床面積の合計(㎡)
  • 申請理由

消防法令適合通知書交付申請書には、さらに民泊施設の案内図、配置図、平面図及び「登記事項証明書」を添付する必要があります。

「消防法令適合通知書」を発行してもらうのも大変手間がかかりますね。

「登記事項証明書」を交付してもらうには、登記所、法務局証明サービスセンターの窓口で請求できるほか、郵送、インターネットを利用したオンラインによる請求を行うこともできます。

インターネットを利用したオンラインによる請求は、窓口・郵送と比較して手数料が安くお得です。

民泊施設の案内図、配置図、平面図と「登記事項証明書」を添付した「消防法令適合通知書交付申請書」を管轄の消防署予防指導課に提出し、消防法の基準に適合していれば、「消防法令適合通知書」が交付されます。

防火対象物使用開始届出書

自治体によっては「消防法令適合通知書」以外にも届け出や申請が必要になることもあります。

例えば、「防火対象物使用開始届出書」は、防火対象物の使用を開始する7日前までに提出が必要になります。

防火対象物とは、不特定多数の人が出入りし利用される建造物のことです。

 

民泊を始める時の心強い味方「行政書士」の役割

空き室や空き家を抱えて悩んでいるオーナーの中には、民泊の営業を今すぐにでも始めたいと考えている人もいるでしょう。

しかし、民泊を始めるためには民泊施設を「民泊新法」「建築基準法」「消防法」に適合させなければなりません。

それだけでなく各自治体によって「民泊条例」が存在しており、その基準も様々で複雑です。

そのため、法律(条例)に精通した「行政書士」は、民泊営業を開始するうえで心強い存在となります。

【行政書士とは?】
官公庁に提出する許認可に関する書類や、権利義務・事実証明に関する書類の作成・提出手続きの代行を行うことができる国家資格者です。

行政書士と司法書士の違いとは?

行政書士と司法書士、どちらも法律にまつわる書類を作成する仕事ということもあり、中には間違えてしまう人もいるようです。

行政書士と司法書士の大きな違いは、作成した書類の提出先です。

司法書士は、法務局や裁判所に提出する登記や裁判に関わる書類を作成します。

それに対し、行政書士は、行政機関・官公庁に提出する書類(主に許認可に関する書類)を作成します。

民泊で使用したい物件の相談

民泊を始めようとして、物件を購入したが民泊施設として届け出ができない物件だった、建築基準法や消防法に適合させるために大がかりな工事が必要なことがわかった・・・といった失敗例も多く発生しています。

後に引けずに違法営業すれば、待っているのは摘発・書類送検です。

これまで違法に民泊を営業する「ヤミ民泊」が増えて問題になっていましたが、新しく交付された「民泊新法」では、ヤミ民泊には厳しい罰則規定が設けられています。

既に所有している物件で、民泊営業を開始したい場合でも、この住宅で民泊の届け出が可能かどうか、建築基準法や消防法に適合させるにはどのような工事が必要で、工事費用はどのくらいかかりそうかなど、確認しなければならないことはたくさんあります。

民泊の届け出ができる住宅かどうか、民泊を適正に営業できる施設かどうかを判断するためには、地域によっても許可の基準が異なることもあり、自分で判断するのは難しいでしょう。

行政書士は、民泊で使用したい物件の相談にも乗ってくれます。

法律(条例)に精通した「行政書士」は、民泊営業をはじめる際に心強い味方となってくれるはずです。

民泊営業を始めるために必要な手続きの代行

民泊の届け出や手続きは、オンラインでもできるようになり便利にはなりましたが、不慣れな人であれば申請書ひとつ作成するだけで、相当な手間と時間を要するでしょう。

行政書士に依頼すると費用が発生するから、役所に相談しようと考えている人もいるかと思います。

役所で何かしら相談したことのある人ならおわかりかと思いますが、役所の窓口の対応はマニュアル的で、難しい言葉を並べ立て、威圧的と感じることも多く、ある程度、予習して理解してからでないと、全く相手にされずに門前払いということも珍しくありません。

「行政書士」は、役所関係の許認可申請のプロですから、スムーズに手続きが進みます。

行政書士に依頼することで、届け出や申請手続きに関わる時間を、他の作業に有効利用することができるため、開業までの期間も短縮できるはずです。